日本理学整体学会公認
Therapeutic Manipulation without Pain
動物の赤ちゃんは生まれるとすぐに立ち上がり、数時間で動き回ることができますが、人間の赤ちゃんは立ち上がって歩けるようになるまで約1年かかります。
動物の場合は動けないと外敵から逃げることができず生死にかかわりますが、人間はその必要が無いからだと言われています。
しかし、それだけでしょうか?
実は2足歩行というのは非常に高度な機能で、これを獲得した進化の歴史を赤ちゃんは1年かけて再現しているのです。
受精卵が分裂して人間の形になる初期発生の段階では、魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類の間で、形が非常によく似ています。
人間の赤ちゃんも発生の初期には鰓(えら)があり尻尾があるのです。
その後、お母さんのお腹の中で人間の形にまさに進化して生まれてきます。
ところが、生まれたばかりの赤ちゃんは、人間が立ち上がるために必要な腰椎の前湾はまだ無いのです。
生まれてから腰椎の前湾を手に入れるための戦いが、赤ちゃんを待っています。
外敵はいないかもしれませんが、決して赤ちゃんはのほほんと歩けるようになるまでの1年を過ごしている訳ではありません。
寝返りをうてるようになると、よく赤ちゃんは腹ばいになって背中を反らす運動をします。
また、抱っこをしてあげると「いやいや」をするように大きくのけぞる仕草をします。
これは赤ちゃんが腰椎の前湾を一生懸命作ろうとしているのです。
そして、腰椎の前湾ができてくると、ようやく立ち上がることができ、歩くことができるようになるのです。
もちろん筋肉や骨の発達も重要な要素ですが、生まれてすぐに立ち上がることができる動物と、1年もかかる人間との一番大きな差は腰椎の前湾が必要かどうかです。
前回みたように、数多い脊椎動物の中で、腰椎の前湾を有しているのは人間だけなのですから。
腰椎の前湾を獲得して歩けるようになるのに1年もかかるということは、人間が他の哺乳類から進化した最後のステップがいかに大きいかを物語っていると思われます。 決して、外敵がいないのでのんびり成長している訳ではないのです。