日本理学整体学会公認
Therapeutic Manipulation without Pain
2006年12月8日の夜、風呂で右半身を洗おうとタオルを右手から左手に持ち替えようとした瞬間のこと。
「あれ、タオルが持てない!?」
左手の指に全く力が入らない。
左手が完全にマヒしていました。
実はその半月ほど前から、左上腕に神経痛のような鈍いけれどもかなり重い痛みが続いていて、今度MRIを撮りましょうと整形外科で言われていたところでした。
仕事は慢性的に忙しく、会社のメンタルヘルス診断では「うつ病の黄色信号」と言われており、ストレスによる一時的な麻痺だろうと高を括っていました。
毎晩帰るのは午前様。
単身赴任をしていたので、そんな時間に帰って食べる夕飯はきまって居酒屋になってしまう。
身体は疲れているのに脳は興奮状態が続いているため、酒量は増えて明るくなるまで飲んでいることもしばしば。
それでも次の日はちゃんと会社に行けていたが、ここ何回か起きられない日があった。
休日も半分は出勤。
休める日は昼過ぎまで熟睡。
「寝れずに死んだ人はいても、風呂に入れなくて死んだ奴はいない」と言って、1週間風呂に入らず少しでも睡眠時間を「稼ごう」とする毎日。
いま思うと、こんな生活を何年も続けていて身体を壊さない方が不思議ですよね。
しかし、このときはまだ楽観的でした。
MRIの診断結果は5番と6番の間の「頸椎椎間板ヘルニア」。4週間に亘る寝たきり生活が始まりました。
いろいろ調べると40代から50代に比較的多い病気とある。でも借金もしてないのに首が回らなくなって寝たきりの人なんて聞いたことないぞ!
なぜヘルニアなんかになってしまったんだろう?
本には対症療法は書いてあっても原因までは書いていない。
歳をとると誰でもかかる病気のように書かれている。
整形外科で聞いても「加齢のせいです」と、私より遙かに齢を重ねた老先生があっさりと仰る。
少しずつ回復して単身赴任先の会社の寮まで電車で出掛けた。
片道2時間くらいを単線ディーゼルでトコトコ走る路線だ。
私は頸椎カラーをして、なるべく頸に負担がかからぬようにと背筋を伸ばしてじっと前を見ていた。
そのとき隣では80代くらいの老夫婦が「頸を回して」車窓から景色を楽しそうに眺めて談笑している。
なんでこんなヨボヨボの(ごめんなさい!)おじいさんとおばあさんは平気なのに、まだ40代の自分がこんな状態になってしまったのだろう。
そう思うと無性に悲しくなってきた。
しかし同時に、絶対に治してやるという気持ちも沸いてきました。
とにかく原因が知りたい!
老先生からは、ヘルニアは無くならないけど一生頸を労って生きていけば死ぬまで手術しないで済むからと、どこまで本気か半分脅しとも取れる言葉を頂戴していた。
でも原因が分かってそれを取り除ければ治るんじゃないか?
ひょっとしたら以前のようにスキーやテニスもできるようになれるかもしれない。
いや、たとえ激しいスポーツは無理としても、四六時中頸を労っていなくても済む普通の生活に戻れるようになるのではないか。
とにかく関係しそうな本を読みあさりました。
どの本にも書いてある牽引療法・運動療法・温浴療法をもくもくと続けました。
しかし、どうも効果が出ている感じがしない。
そして、将来的にも完治する確信が持てないまま、職場復帰の予定がきました。
ところが、復帰にあたって産業医の先生の面談を受けたところ、もう1週間様子を見なさいと言われた。
なぜ、このときもう1週間と言われたのか、今思い起こしてもよく分りません。余程自信のない顔をしていたのか、兎にも角にもこれが運命の1週間になりました。
もう1週間休みなさいと言われ、この間に読む本を借りようと図書館に行きました。
このときに見つけた本が、右の写真の本です。
内容的にはヘルニア患者の体験談ですが、随処にある著者のコメントが私がずっと疑問に感じていたことを、予め準備していたかのように的確に答えてくれているのである。
なぜヘルニアになるのか。
ヘルニアは治らないのか。
西洋医学の対症療法の限界。
リハビリの矛盾点などなど。
「整体」。これが私の希望を叶えてくれるもの??
「せ・い・た・い」の「せ」の字も知らない。
按摩もマッサージも此の方してもらったことなどない。
学生時代に腰を痛めて鍼に行ったことがあるけど、全く効果がなく数回でやめてしまった。
しかも著者が開院されているのは銀座と岐阜で簡単に行ける処ではない。
と、いろいろ思い巡らせながら関係するホームページはないかとインターネットを繰っていると、何と電車で2駅のところに同じ手技の先生が居られるではないか。
それから行動の素早かったこと。
1時間半後にはそこの施術院に居ました。
最初に背中と側方から写真を撮られ、左右半身のアンバランス、特に左肩が下がっている点を指摘されました。
私はずっとスキーをやっていて自分の身体が左右アンバランスなのは知っていましたので、そんなことはどうでもいいから早く頸を治してくれーと思いながらも、為されるがままにしていました。
もちろん、こういう処では為されるがままにするしかないのですが…。
しかし全く不思議な手技でした。
治してほしい頸はおろか体幹にも一切触れません。
両手足を順番に回したり落としたりするだけです。
半分ダメ元という気持ちもありましたので、終わりの頃には治れば儲けもの(失礼!)という感じでした。
終わってから再度写真を撮ってもらってびっくり仰天!
いや、「びっくり仰天」なんて無粋な言葉は赤面してしまいますが、ほんとうにびっくりでした。
スキーをやってきて「右ターンはいいけど左がねぇ。」とずっと言われ続けて、15年以上ストレッチや筋トレで左右のアンバランスを取ろうと頑張ってきましたが、なかなか取りきれませんでした。
それがたった1時間で取れてしまったのです。
どんなふうに変わったのかは(2)の方に書こうと思いますが、とにかくその晩は感動のあまり眠れませんでした。
感動で興奮して眠れないなんて子供のとき以来、いや子供のときもあったかどうか記憶すら定かではありません。
結局私の頸椎椎間板ヘルニアは、若い頃からずっと持っていた左右のアンバランスによる身体の歪みが、ストレスも手伝って頸椎の異常となって発現したと自分では分析しています。 そして身体の歪みを無くせばヘルニアも治ると確信できたのです。