ロコモティブ・シンドローム(2)

  前回「ロコモティブ」の意味を見ましたので、今回は残り「シンドローム」について見てみましょう。
  「シンドローム」、日本語では「症候群」と訳されます。 これはもともと医学用語でしたが、「ピーターパン・シンドローム」や「チャイナ・シンドローム」のように広くは社会的現象にまで使われています。 広義の意味まで広げると収拾がつかなるので、医学的な意味に限って話を進めます。

  Wikipediaによりますと、

とあります。 このように「症候群」というのは非常にあいまいで、「とりあえず」症候群と言っておけばいいかっ!てなもんです。
  前回「ロコモ」は「メタボ」を意識して作られたんじゃないかと言いましたが、「症候群」の使い方もメタボを真似ているようです。 メタボリック・シンドロームは日本語では「代謝異常症候群」となりますが、この「症候群」には「予備軍」の意味を持たせています。 何の予備軍かというと「動脈硬化」の予備軍です。
  では、ロコモは何の予備軍でしょうか? それは「運動器不安定症」の予備軍です。 またまた聞きなれない言葉が出てきましたが、「運動器不安定症」とは、保険治療の対象となる立派な病気です。 そして、ロコモと運動器不安定症の関係は下図のようなイメージになります。

運動器不安定症

  2009年の日本人の平均寿命は女性86.44歳、男性79.59歳と、女性は世界一、男性は世界5位の長寿国です。 ここのところ100歳以上のお年寄りが行方不明で減っていますので、平均寿命は若干下がるかもしれませんが、日本が有数の長寿国であることに変わりはありません。
  もう一つ「寿命」の概念として「健康寿命」というのがあります。 文字通り健康でいられる寿命ですが、ここで言う「健康」とは「介護を必要としないで自立した生活ができる」ことを意味しています。 2004年の日本人の「健康寿命」は、女性80.63歳、男性で77.64歳(平成18年度 国民生活白書より)です。

健康寿命の計算方法はいくつかあり、同年WHOが発表したデータでは、日本人の健康寿命は女性77.7歳、男性72.3歳になっています。

  以上の関係を図示すると下のようになります。
  そして、寿命を終わらせる3大原因が「癌(がん)」「心臓病」「脳卒中」であるなら、かたや健康寿命を終わらせる3大原因は「脳卒中」「運動器疾患」「高齢による衰弱」となっています。 なので、厚労省は2006年、介護予防の観点から運動器リハビリテーションの対象となる「運動器不安定症」なる病名を創出したのです。


  次回は、いよいよロコモとは何か、ロコモの中身に入って行きます。