日本理学整体学会公認
Therapeutic Manipulation without Pain
前回、肩甲骨の動きとして「挙上」と「上方回旋」を説明しました。 この他に、肩甲骨には「外転」「内転」「下制」「下方回旋」という動きがあります。
このように肩甲骨が上下左右に動け、さらに回転もできるおかげで、腕を肩の周りで大きく自由に動かすことができるのです。
解剖学では肩の動きを、外転・内転・伸展・屈曲・外旋・内旋・水平屈曲・水平伸展と小難しい言葉で分類していますが、これだけではどうしても表わせない動きがあります。
肩を中心に腕をグルグルと前後に回す動きです。
これを専門用語で「分回し(ぶんまわし)」と言います。
小難しい言葉を音読みで使う解剖学の中にあって、冗談みたいな名称ですね。
良い言葉が思いつかなくて、やけくそになったんじゃないかと思ってしまいます。
(本当は文房具のコンパスのことを古い和名で「ぶんまわし」と言っていたのから来たみたいですが。)
ちなみに英語では circumduction (医学書院 医学英和辞典では「環状振揺」と訳しています)と言います。
この「分回し」を最大限利用した運動が「投げる」という動作です。
私は、投擲(投げる動作)は二足歩行と並んで人類が獲得した最も高度な運動ではないかと思います。
人間ほど巧緻な投擲動作ができる動物はいません。
ところが二足歩行は百万年以上も前に完成したのに対し、現在の投擲技術ができあがってきたのはここ百年のことです。
そのため、人類のまだ半分以上は巧緻な投げ方ができません。
投擲はまだまだ進化の過程にあると言ってもいいかもしれません。
投げるという動作は、6〜7歳で獲得しないと一生身に付かないと言われています。
小学3年生になると投げられる子と投げられない子との差がはっきりと見られます。
女の子は男の子に比べて投げる動作をする機会が圧倒的に少なく、そのため「女投げ」(セクハラ用語じゃないですよね(^ ^;汗)という言葉が存在しているくらいです。
男性でも女投げしかできない人はいっぱいいます。
また、おじさん野球を見ていると、やはり巧(うま)く投球動作ができていない人が大勢います。
これはいわゆる「かっこ悪い」投げ方で、素人が見てもはっきり分かります。
これだけ毎週毎週野球をやっているにもかかわらず、悲しいかな投げるという動作は三つ子の魂のようです。