「ためしてガッテン」の功罪(1)

  「ためしてガッテン」は、毎週水曜日の午後8時にNHKで放送されている健康TV番組です。 2007年から続いているみたいで、ご覧になっている方も大勢おられると思います。 私はたまに見る程度ですが、最近の「ためしてガッテン」の中で、これまでなかなか触れられてこなかった真実を、ゴールデンタイムの番組の中で敢えて視聴者に示した評価できる点がいくつかあります。 一方で、この手の番組にありがちな問題点や疑問点もやはり多々あります。

  視聴者は、TVやマスコミで報道されることが必ずしも真実ではなく、虚偽や誤解が多数含まれたものであることは十分承知していると思います。 しかし、司会者やゲストとして登場した医者がしたり顔で語っていると、ついつい信じてしまうのも人情です。 これから数回にわたって、「ためしてガッテン」で放映された内容を検証しながら、健康番組の功罪について述べていきたいと思います。

骨盤ダイエットはウソっぱち!

  これは『街のウワサを大検証 それってホント!?スペシャル』という題名で、昨年8月3日に放送されたものです。 番組の中で、骨盤ダイエットで一般に良く言われている、

について、実験結果と専門家の見解をもって全否定しています。 同様にこの番組の中で、巻くだけダイエットも医学的に全く根拠が無いと言い切っています。
  たまたま妻と一緒に見ていたのですが、NHKがここまで言っていいのか?と2人で顔を見合わせました。 内容的にはもっともなもので、骨盤ダイエットや巻くだけダイエットという詐欺まがいの書物や商品が街に溢れていることに対する警鐘だったのでしょうか?

生姜湯も医学的に根拠なし

  体温を上げると健康になるというのも、どこまで本当か疑問符が付きますが、「ためしてガッテン」ではこのこと自体は否定していませんでした。 しかし、食べ物で体温が上がるといのは、この同じ放送の中で否定しています。 生姜湯を飲むと身体がポカポカしてきますが、体温は実際ほとんど変化していないという実験結果を紹介していました。
  食べ物で体温が上がるという内容の本が巷に溢れていますが、恒温動物である我々の身体が、何かを食べたからと言って簡単に体温が変化するようなことはないことは、ちょっと考えれば分かると思います。 しかし、視聴者を納得させるには実験結果を示した方が、確かに説得力があります。 科学的根拠のない話に踊らされるなと警鐘を鳴らしたという点で、評価できるのではないでしょうか。

癌予防でマイナス点!

  そして、同じ番組の最後に「たった150円で癌予防ができる」という内容を紹介していました。 150円というのは歯ブラシのことで、これは以下の理屈です。

    • 歯磨きによって口の中のアセトアルデヒドが除去できる。
        ↓
    • アセトアルデヒドは発癌性物質である。
        ↓
    • よって歯磨きをすれば癌にならない。

というものです。 さらに、どこかの山岳部に何日間か禁歯磨きをさせて、口中のアセトアルデヒド濃度が増えているというデータを紹介して、この理論の正当性を主張していました。
  これを見て唖然としました。 前半でさすがNHKとちょっとは見直したのですが、やっぱり骨盤ダイエット集団と同じ穴のムジナなんだなとがっかりしました。
  現在さまざまな発癌性物質がありますが、癌と因果関係が認められているのはタバコとアスベストだけです。 その他の物質は、癌と何らかの関係がある可能性があるようだというレベルで、アメリカを中心に膨大なデータが取られていますが科学的に因果関係を立証できていません。 昔はウサギの耳にタールを塗りつけて人工的に癌を作っていましたが、今ではこれもタールの持つ発癌性のせいではなく、タールを塗ることで継続的に炎症を起こさせられたために癌が発生したと考えられています。
  そして何よりも、癌は歯磨きだけで予防できる単純なものではありません。 子供を騙すにしてもあまりにも稚拙な考え方で、やはりこの手の番組というのは無茶苦茶だなと改めて思い知らされました。

骨盤ダイエットを再検証

  「ためしてガッテン」で全否定された骨盤ダイエットですが、果たして骨盤と痩身は全く関係ないのでしょうか? ダイエットというのが減量という意味なら、それは「ためしてガッテン」の言う通りですが、「スリムに見える」「姿勢が良くなる」という点からみると、骨盤はおおいに関係ありです。
  骨盤ダイエットの理論が無茶苦茶だというのはその通りですが、少し違った観点から見てみましょう。 (次回につづく)