日本理学整体学会公認
Therapeutic Manipulation without Pain
今年2月に、昨年11月の腰痛の続編が放送されました。
ひどい慢性腰痛で悩んでいた方が、毎日歩くことで劇的に回復したという内容です。
さすがにただ歩くだけではダメで、以下が重要と言っています。
(1) 歩く前におなかと背中を伸ばすポーズをする。
(2) 15分歩く。
(3) 一日ごとの痛みの変化を日記に記録する。
なぜ、歩く前におなかと背中を伸ばすかというと、適度に腰の筋肉に負荷がかかる姿勢を保つことで『痛みの悪循環』を断つためだということです。 『痛みの悪循環』とは何かというのを、またまた「ためしてガッテン」のホームページから紹介します。
「痛み」を感じると再び痛みに襲われるのではないかという「不安」にかられ、腰を使わないように「安静」にしてしまいます。
すると、「筋力低下」「血行悪化」が起こり、痛み物質が流れずにとどまってしまいます。
それらはすべてストレスとなって「脳の鎮痛作用低下」をもたらし、「さらなる痛み」に襲われます。
[NHKためしてガッテン]
つまり、「腰痛」→「安静」→「筋力低下と血行悪化」→「痛み物質の停滞」→「ストレス」→「脳の鎮痛作用低下」→「腰痛」というのが、『痛みの悪循環』だということです。
ストレスと脳内物質の鎮痛作用の話を百歩譲って目を瞑ったとしても、新たな無茶苦茶な理屈を盛り込んでいます。 何が無茶苦茶かというと「痛み物質」なるものを持ち込んでいることです。 腰痛の85%は原因不明だったんじゃないんでしたっけ?志の輔さん! 「痛み物質」というものがあるのなら、原因不明じゃないではないですか! したり顔して言ってて恥ずかしくならないんでしょうか?小野文恵アナ!
「痛みの変化を日記に記録する」というのは、自分の痛みの特徴を掴むことで痛みとのつきあい方を分かるためだと言っています。
これはその通りだと思います。
記録を付けることで自分の身体の変化を客観的に見ることができ、また変化が統計的に分かることで継続の力になります。
これは腰痛に限った話ではなく、ダイエットやさまざまな闘病に対しても共通に言えることです。
もう一つ、歩く前に身体を伸ばす行為。
これは「ためしてガッテン」の中で全く触れられていない、非常に重要な効果があります。
腰痛のほとんどは、じっとしているときは痛みが無く、動くと痛みが出ます。 これは動くときに筋肉が伸縮するからです。 痛みを発しているのは、「腰痛のメカニズム」で述べているように、腰回りの筋肉・筋膜・靭帯です。 そして、これらが痛みを発するのは腰回りの筋肉の伸縮が異常なためです。
では、異常のない正常な腰回りの筋肉というのはどんな状態なのでしょうか? それは屈筋(腹筋)と伸筋(背筋)のバランスが取れ、「腰痛と腰のくびれ」で述べた腰椎の前湾がしっかり作られている状態です。 そして、「ためしてガッテン」が紹介していた「歩く前に身体を伸ばす」運動が、腰椎の前湾を作る動きになっているのです。
ためしてガッテンの身体を伸ばす運動を紹介しましょう。
1. 肘(ひじ)を体に沿って上げる 2. 腕だけを下ろす 3. おなかと背中が伸びていることを確認
[NHKためしてガッテン]
これは、何をやっているかというと、まさに腰椎の前湾を作っているのです。
最初に肘(ひじ)を上げていますが、この姿勢を長い時間維持しようとすると、どこの筋肉が痛くなって(または疲れて)くるか試してみてください。
背中の筋肉が痛くなってきますよね。
もし背中が痛くなってこないとしたら、肘が正しい位置に上がっていませんよ。
背中が痛くなるのは、絵のように身体の真横に肘を張って肘の高さを肩より上に挙げるためには、背筋が使われるからです。
次に腕だけを下ろすとありますが、これは肩も一緒に下ろすと、せっかく縮めた背筋が緩んでしまうからです。
腰痛の人というのは、ほとんどが伸筋(背筋)よりも屈筋(腹筋)の方が緊張しており、そのため腰椎の前湾が無くなっています。
そこで、背筋を緊張させることで、正しい身体の形に戻すことをしている訳です。
この手の運動というのは、他にもいろいろ考案されています。 先日、機会があって朝倉千恵子さんの講演を聞きました。 その中で、おじぎの仕方(右図)を教わったのですが、姿勢の良いおじぎをする前の運動があります。 それは以下のようなものです。
(1) 気を付け!の姿勢から肩を上げる
↓
(2) 肘を後ろに引いて
↓
(3) 腕をストンと落とす
この場合は、2つ目の肘を後ろに引いたときに背筋が緊張します。
(1) 肩を上げて (2) 肘を後ろに引いて (3) 腕をストンと落とす
また、腕を頭の上まで挙げるときにも背筋を使います。
デューク更家のウォーキングエクササイズも、腕を挙げることで背筋を緊張させ、腰椎の前湾を作ります。
そして、その状態を保ったまま歩くことで、正しい姿勢を身に付けさせるものです。
これらは、まったく同じ身体運動原理を使っています。