「ためしてガッテン」の功罪(5)

  「ためしてガッテン」を例に健康TV番組の功罪を論じてきました。 少し古いですが、2006年の日経ビジネスに健康TV番組についての論評がありました。 その中に「健康番組にも“松竹梅”がある」という副題で始まる一節があります。 それを紹介しましょう。少し長いですが、重要なフレーズは強調していますので見てください。

  「茶といえばカテキンが効いている」「ワインにポリフェノールがたくさん含まれている」--。
  健康情報番組のおかげで国民は、短期間に大量の健康情報に触れることが可能になった。 しかし、それらには、食材の一部の機能を誇張して取り上げたり、別の成分の有害な側面を故意に軽視したり、あきらかに論理の飛躍と思える情報も含まれている。
  カレーに入っているクルクミンが血圧を下げる働きがある。 高血圧患者はカレーを常食すべきか。 もちろん答えはノーだ。 市販のカレールーには塩分も含まれている。 最近は塩分だけではなく、脂肪の過剰摂取も高血圧を悪化させることが判明しているが、市販のルーが大量の脂肪で成型されていることは周知の事実だ。 頻繁に食べれば、塩分も脂肪も摂取過多になる。
  にもかかわらず、番組ではクルクミンの効能だけが取り上げられて説明された。 これは過去に実際にあった話だ。 ゲストとして呼ばれた高血圧の専門医は「出演したことを後悔している」と記者に語った。
  「カレーは高血圧にいいですね」と本番中に司会者に念押しされた医師は「カレー“粉”はいいです」とせめてもの抵抗を見せたという。
  いくつかの健康番組にコメンテーターとして出演した経験を持つガンの専門医も、「まじめな番組もあるが、番組スタッフが、医師のコメントよりも、強烈なパーソナリティーを持つ司会者の意向を重視し、医学的な正確さよりも、単純化したコメントを採用する傾向がある番組がある」と苦言を呈する。
  こうした番組では、医師は論理の飛躍をカモフラージュする装置にしか過ぎなくなる。 このような扱いに疑問を抱いた医師が増えれば、当然出演を拒む医師も増える。 毎回、異なった顔ぶれの専門家が登場するか、限られた顔ぶれの割り切った医師しか登場しないかが、健康番組のスタンスを見極める手がかりの1つになるはずだ。
  健康情報番組といっても、取り上げる健康情報は玉石混交という番組も存在する。 健康情報、医学情報には“松竹梅”がある。信頼すべき情報もあれば、全く偽りに近い非科学的、非論理的な情報もある。 健康情報に振り回されないこと。 そのためには、まず健康情報番組の松竹梅を見分けるところから始める必要がありそうだ。
[日経ビジネス]

  もう一つ、ガン専門医が自身のブログで、NHKのガン治療番組に対して「正確な情報を伝えていない偏向報道であり、かなりのヤラセ番組である可能性が、極めて高い」と述べています。 さらには、なかには「どうしても許しがたい内容もある」と書かれています。 是非以下を読んでみてください。
  http://umezawa.blog44.fc2.com/blog-entry-54.html
  http://umezawa.blog44.fc2.com/blog-entry-80.html

  TV番組だけでなく、書籍やインターネットも同様です。 ボタンひとつで何でも調べられる便利な世の中になり、情報が氾濫しています。 何が真実で何がまやかしか、正しい知識と判断で自分の身体を守らないといけない時代であることを知ってください。


以上で本シリーズを終了します。
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