日本理学整体学会公認
Therapeutic Manipulation without Pain
「ミラクルボディ」という番組が7月14日(土)〜16日(月)に3夜連続で放映されました。 それぞれ陸上のウサイン・ボルト、体操の内村航平、ケニアのマラソン・トップランナー達の身体構造や運動能力を解き明かそうというものです。
第1夜(7月14日(土))は、人類最速と言われるジャマイカのウサイン・ボルトでしたが、最初にボルトがシャツを脱いだ瞬間、彼の身体を見て「えっ!!」と仰天しました。
ひどく下がった右肩、左右不均衡な背筋、大きく傾いた骨盤...
鍛え抜かれた均整のとれた肉体を期待して見ていた私は唖然としました。
ボルトの身体は健常者とは言い難いほど壊れまくっていたのです。
この壊れまくった身体でまともに走れるはずがありません。
事実、ボルトは走るときに肩と骨盤を前後左右に大きく揺さぶりながら走ります。
そして、揺する幅--可動も左右で大きな差があります。
その結果、右脚のストライド(歩幅)と左脚のストライドに50cmもの差があるとのことなのです。
人類最速の人間がこんな身体だったなんて・・・、こんなのありでしょうか!?
ボルトの身体が壊れている原因は、子供の頃からの脊柱側湾症が原因だそうです。 ちょっと調べてみると、ボルトが脊柱側湾症であることは有名な話のようです。 そのために骨盤が傾き独特の走り方になっているのですが、壊れた身体で走っているのですから、決して身体に良い訳がありません。 骨盤の傾きが左右で異なるため、どうしても左のハムストリングスに大きな負荷がかかるそうです。 その対策として、ハムストリングスを徹底的に鍛えて大きな荷重に耐えられるようにしたということです。
番組の中で、脊柱側湾症を治すために手術を考えたこともあると述べていました。
しかし、本当に手術をしなくて良かった。
もしも手術をしていたら、世界記録どころかまともに走れなくなっていたかもしれません。
手術偏重主義は世界共通なのかと、人々に染みついた間違った非常識の大きさを改めて思い知らされました。
さて、ボルトの脊柱側湾症は理学整体で治せるでしょうか?
脊柱というのは、椎骨が積み木のように積み重なったものです。
側湾症の原因が椎骨自体の変形であったなら、理学整体でも治すのは難しいと思います。
しかし一つ一つの推骨の形は正常で、脊柱の周りの筋肉の伸縮が異常なために全体として側湾しているのなら、十分理学整体で治せると思います。
ただし、治したことでボルトがさらに速く走れるようになるかは私は疑問です。
なぜならボルトの走りそのものが非常識だからです。
非常識なものに常識で考えた一般論は通用しないでしょう。
この放送の中で2点間違いがありました。
1点目はボルトとパウエルの1歩目の踏み出しを比較して、ボルトの方が1歩目の着地に時間がかかる理由を右膝が真っすぐ曲がらず内側に入ってしまうせいだと解説していた点です。
膝が内側に入るのと着地に時間がかかるのは何の因果関係もありません。
高速度カメラの映像から、1歩目の着地に時間がかかっているのは、明らかに腰の立ち上がる高さが大きいためです。
もう1点は、筋肉の力を計測するのに大腿四頭筋(伸筋)を計測している点。
早く走るのに必要な主働筋は屈筋です。
実際、番組の後半ではハムストリングスの話が主体になっていました。
もちろんハムストリングスを鍛えると拮抗筋である大腿四頭筋も肥大しますが、直接比較する筋肉を間違えてますね。
誰が監修したか知りませんが、前回まで言っていたように、番組の内容を100%鵜呑みにしてはいけないという例です。
重箱の隅を突くような指摘をしてしまいましたが、番組全体としては貴重な映像を綴った良い内容でした。 ウサイン・ボルトのロンドンオリンピックでの活躍を期待しています。