日本理学整体学会公認
Therapeutic Manipulation without Pain
我々が子供の頃は、体育でよく「柔軟体操」というのをやらされました。 二人一組で後ろから押したり前から引張ったりするやつです。 私は身体が固く、この柔軟体操が大嫌いでした。 運動中は水を飲んではいけない等、非科学的な理屈がまかり通っていた時代です。 大学の頃からでしょうか、欧米式の科学的トレーニングが徐々に広がってきたのは。 ウェイト・トレーニングやサーキット・トレーニングとともに、ストレッチ(ストレッチ体操・ストレッチング)というのをよく耳にするようになりました。 今やストレッチ(少なくとも言葉だけでも)を知らない人はいないでしょうし、書店に行けばスポーツコーナーにはストレッチの本がたくさん並んでいます。
此処で少し論じてみようと思ったのは、「身体の歪みについて」で書いている『ストレッチやヨガは身体にいいか?』を少し補足したかったためです。
ストレッチの3大原則は、@反動をつけないこと、A呼吸を止めないこと、B無理をしないことと言われています。
あと注意点としては、身体が温まった状態でやることとか伸ばしている筋肉を意識することとかあります。
@は筋肉の損傷防止のため(「動的ストレッチ」といって反動を利用するものもありますが)、Aは当たり前(呼吸を止めたら死んじゃいますもんね…って勿論冗談ですよ、呼吸を止めることで筋肉が緊張するからです)として、問題はBです。
「無理をしない」とはどういうことでしょうか。
具体的には「痛みを感じるところまで伸ばさない」とか「気持ちいいところで止める」という説明がされています。
ストレッチの目的が「マッサージ効果を得る」のであれば、これで充分です。
ウォームアップやクールダウンでストレッチを行うのはこのためで、決して無駄なことではありません。
しかし、歪んだ身体を治そうと思うとこれでは全く不十分です。
そこで、歪んだ部分を治そうと痛みを我慢して一所懸命伸ばすとどうなるでしょうか。
答えは簡単で筋肉や腱を痛めます。
競技者は闘争心が旺盛なのか無理をしすぎる傾向があり、ストレッチも懸命にやりすぎてしまうようです。
そのため、スポーツトレーナの中にはストレッチを否定してやらせない人もいます。
では、身体の歪みを治すにはどうすれば良いのでしょうか。
ここで少し、横道にそれましょう。
長座の姿勢になってください。
このときに太腿の前面に力を入れて膝はきれいにまっすぐ伸ばしてください。
この状態から前屈して、少しきついなと感じるところで静止してください。
太ももの前面に力を入れて膝はまっすぐに保ってください。
痛いところまで曲げないでくださいね。
筋肉を痛めちゃいますよ。
息は止めないで!
死んじゃいますから(^ ^)。
最初は膝や太ももの裏側がつらいと思いますが、この状態を暫くキープしているとだんだんつらさが無くなってくると思います。
そして意外とお腹や腰回りがきつくなくなっていませんか。
もし分かりにくければ、ふぅーっと息を吐きながらもう少しだけ曲げてみましょう。
今度は腰回りが抵抗するのを感じませんか。
もうひとつやってみましょう。
長座から片膝を立てて片方の足を跨ぎます。
そして立てた脚の方に上半身を捻って、反対側の肘で立てた膝を押さえます。
どのストレッチの本にも必ずあるポーズですね。
これは立てた脚の方のお尻の筋肉のストレッチですが、これも少しきついなと思うところで暫くキープしていると、だんだん腰回りがつらくなってくるのが分かりますか。
普段から良く運動をされている方は、最初から腰回りがきついところで止まると思います。
整体を勉強していると「骨盤の弾力」とか「脊椎の弾力」という言葉をよく目にします。
でも骨自体がゴムのように伸び縮みすることはありません。
骨を繋いでいる関節が十分可動することを言っています。
上の運動で腰回りがきつくなったのは、腰椎の可動域があなたの限界に近付いたためです。
人の身体は、関節がよく動くと、骨とか血管とか神経とか臓器とかが自然と正しい位置に収まるようにできています。
ところが、筋肉が恒常的に緊張状態にあると関節が十分に動けず、一定の方向に固まってしまいますので身体に歪みが出ます。
それが日常化するといろいろ身体にとって不都合なことが生じて、さまざまな症状となって表れます。
身体の歪みを治すには筋肉の緊張状態を取ってあげることが必要になりますが、それは関節の可動域を広げることにつながります。
結果として可動域が広がるのか、可動域を広げることで緊張が取れるのかはよく分かりませんが、とにかく表裏一体の現象のようです。
いずれにしろ、筋肉のマッサージ効果を期待するストレッチではなく、関節の可動域を広げる「整体体操」が必要になってくる訳です。
「整体体操」がどういうものかについては、私もまだ試行錯誤中です。
関節の可動域を広げることを目標に行っていますが、当然やみくもに曲げたり捩ったりするだけでは返って身体を痛めてしまいます。
最初に述べた昔懐かしい「柔軟体操」はパートナーが無理矢理行うので論外です。
しかし、斯く云う私もいろいろ体操を試す中で、筋肉を痛めて内出血してしまったこともあります。
もう少し勉強して理解を深められるようになりましたら、改めて整体体操の蘊蓄を述べようと思います。
と、ここまで書いた直後、ある「整体体操」を試みた結果たいへんな体験をしてしまいました。
その内容は次に譲ります。