ロコモと整体(1)

  ロコモティブ・シンドロームを提唱したのは日本整形外科学会です。 「整形」は形をととのえると書きます。
  人の身体の形を作っているのは、骨・筋肉・靭帯…など、これまで述べてきた「運動器」です。 そして「運動器」の異常を治して形を整えるのが整形です。 それを主に外科的な手法で行うので、整形外科と言います。
  骨が折れたり、靭帯が切れたりしたときは整形にお世話になります。 酷いときは体を切って治してもらわないといけません。 私もこれまで5箇所骨折していますが、そのうち3箇所は手術をして治してもらっています。 (その節はたいへんお世話になりましたm(_ _)m)

  一方、「整体」の方は体をととのえると書きます。 整体もやっていることは身体の形を整えるだけなのですが、整形と何が違うのでしょうか?
  整形では個々の骨の形は整えてくれますが、身体全体の形は整えてくれません。 最近腰が曲がってきましたと言って整形に行っても、歳のせいですと言って相手にしてもらえないでしょう。 脊椎側湾症でも、個々の脊椎(1個1個の骨自体)に器質的な異常が見つからなければ、姿勢が悪いだけですよと言われて見放されるでしょう。 しかし、個々の運動器に異常が無くても、身体全体の形に異常があるときはやはり治さないといけないのです。 逆に器質的な異常が無いうちに治しておかないと、本当の病気になってしまいます。
  器質異常の有無にかかわらず、身体全体の形を整えるのが「整体」です。 欧米では、整体は医者と同様、国家資格が必要な高度なスキルをもった専門業として位置付けられていますが、日本ではまだまだそこまで地位が確立していません。 そういう意味では、早く欧米に追いついてほしいと思います。

  ロコモティブ・シンドロームは、様々な日常生活動作に支障が出てくる状態を言います。 代表的なものにぎっくり腰があります。 しかし「腰痛のメカニズム」で述べたように、整形外科に行っても器質的な異常−すなわち個々の運動器の「形」には異常が見つからないケースがほとんどです。 ところが、ぎっくり腰を繰り返す人は、身体全体の形に必ず異常があります。


(集英社新書「腰痛はアタマで治す」より)

  下の写真は、ぎっくり腰で立つのも困難になってしまった方の例ですが、これほど身体全体の形に異常が出ているのにも関わらず、整形外科では原因が特定できていません。 このような方は、ロコモティブシンドロームと診断されるのでしょうか…?
  日常生活の動作がしにくいと感じたり痛みで動けなくなったりしたときに、部分的な関節や筋肉の異常だけではなく、身体全体の形が壊れていることを疑うことは非常に重要なのです。


日本理学整体学会の研修会案内パンフレットより)