腰痛のメカニズム(3)

  病院の検査でもはっきりと原因の分からない一般的な腰痛がなぜ起きるのか、ここまでで大体分かっていただけたでしょうか。 痛みを感じるのは「腰部の筋肉・筋膜・靭帯」で、これらが傷付き易いやすいのは、人類が立ち上がったことにより常に緊張しているからです。 したがって、痛みを無くすには、また傷めないようにするには、
 (a) 腰部の筋肉(脊柱起立筋群)にかかる荷重を軽減する
 (b) 腰部の筋肉(脊柱起立筋群)を鍛えて荷重に耐えられるようにする
ようにすれば良いことが分かります。

  先ず(a)の「荷重軽減」から見ていきましょう。
  下の図は、いろいろな姿勢における腰椎への荷重を相対的に示したものです。 普通にまっすぐ立っているときに比べて、寝ている状態では腰への負担が25%になります。 腰を痛めたときに横になって休むだけで快復するのは、腰部の荷重が軽減されるからです。 逆に前かがみになると腰への負担は50%も増え、さらに物を持つことで2倍以上の荷重がかかります。 まさに’ぎっくり腰’を起こすときの姿勢ですね。 意外なのは、座った状態の方が立っているよりも腰への負担が大きいことです。 よく腰の悪い人が「立ってる方が楽だ」と言うのがうなずけますね。


「理学療法 4巻6号」より

  このように姿勢によって腰部の荷重が大きく変化します。 普段の何気ない動作に気を付けるだけで、腰への負担を大きく軽減することができます。(下図)

  次に(b)の「腰部の筋肉を鍛える」ですが、これはかなり難しい。 なぜなら筋肉を常に鍛えている一流のアスリートですら腰を傷めることが頻繁にあるからです。 水泳は腰に良いと言われているようですが、水泳選手で腰痛に苦しんでいる方は大勢います。 いくらトレーニングを積んでも、人類は根本的に構造上の設計不良を抱えているので、これで大丈夫というものはありません。
  上の絵にある’NO GOOD’の姿勢は腰部の筋肉に過大な荷重をかけることを、先ず知っておいてください。 そして、これらの姿勢をとるときにこそ「鍛えているんだ!」という意識を持ってください。 それが一番重要なことなのです。 腰に悪いと思って腰部や腹部の筋肉群を緊張させて動いているときに腰痛になることはありません。
  いろいろな腰痛体操がありますが、「整体体操で身体を壊さないために」で述べたように、万人に合う体操というのはありません。 筋力を付けることが必要なのではなく、筋肉を柔軟にして本来あるべき姿勢を無理なく維持できることが大切なのです。 「あー、身体が(腰が)楽になった」と感じる体操を見つけてください。 それがあなたの身体にとって最も合った体操であり、’筋肉を鍛えた’ことになるのです。