ロコモと整体(2)

  例えば膝の痛みで歩くのが辛いと訴える患者さんが整形外科へ行ったとしましょう。 先ず痛みのある膝のまわりを触診されて腫れなどが無いかを診られます。 そして次はレントゲン撮影。 さらに関節鏡で膝の内部を観察されます。 関節リウマチの疑いはないか、血液検査もあるかもしれません。 これで原因が特定され、そしてその原因を取り除いて痛みが消えれば万々歳ですが、そうならないケースが多々あります。
  つまり、原因らしきものが見つかったとしてもその原因を取り除けない、または原因を取り除いても症状が改善されないケースです。 それどころか原因が分からないというケースも決して少なくありません。

  そのような患者さんが整体に来られた場合、われわれは以下のような診断をしていきます。

  1. 膝が痛いと仰る患者さんは、じっとしているときには痛みはなく動かすと痛いというケースがほとんどです。 ということは、膝の動きそのものに異常があるということです。 関節を動かしているのは筋肉ですので、膝を動かす筋肉の伸縮状態の異常を疑います。
  2. 膝を動かす筋肉のほとんどは骨盤から始まっていますので、筋肉の伸縮状態の異常があれば必ず骨盤に歪みが見られます。 また、膝を動かす筋肉に異常があると、膝から先の形や動きにも影響を及ぼしますので、足先の状態にも異常が見られます。 さらに、膝の筋肉を動かす神経は腰から出ていますので、腰−つまり腰椎の状態に異常がないかを診ます。
  3. 骨盤や腰椎の状態を形作っている大きな筋肉は背筋や腹筋、お尻の筋肉です。 インナーマッスルも大きな役割をしています。
  4. これらの筋肉に異常があり骨盤や脊椎が歪んでいれば、当然その上にくっついている首や肩の動きや形にも異常が出るはずです。
  5. 首や肩がおかしければ、ここからぶらさがっている腕の形にも影響が出ます。 腕の筋肉を動かす神経は首から出ていますので、腕の動きにも異常が出ます。

  このように痛みのある患部だけではなく、全身の状態を隈なく調べていきます。 ここで重要なのは、どこか一箇所の異常が原因になっているのではないということです。 ある部分の異常が他の異常を引き起こし、そこでの異常がまたさらなる異常を引き起こすというように、原因と結果が混在して身体全体の異常となって現れているのです。 そして、身体全体の異常の結果の一つとして膝の痛みが表れたという診立てをします。

  ロコモティブ・シンドロームは運動器疾患をいち早く見つけようと提唱されたものですが、予備軍の見分け方や対応方法が非常に曖昧です。 折角「ロコモかも」と早く気が付いても、結局は画像診断で器質異常が見られないとその先の治療や予防に進めないのが実態です。 「運動をして筋力を付けてください」と言われるのいいところでしょう。
  整体では症状のある患部だけではなく、身体全体のどの部分にどのような異常があるかをみて、それらの異常がどのように症状につながっているのかという観点で診察をします。 実際に身体全体の形を整えることで、痛みが取れたり動きが取り戻せたりすることが非常に多いのです。 もしも「ロコモかも」と感じたら、セカンドオピニオンとして整体に来られてみてはいかがでしょうか?


  整体にもいろいろな考え方がありますが、ここで紹介したのは日本理学整体学会の理論に基づいています。 一方で、残念なことですが日本では整体師の公的資格が無いために、いい加減な整体院が存在しているという悲しい事実があります。 信頼できる整体院を捜して訪ねてください。
  日本理学整体学会認定の整体院は、学会ホームページのリンク集 http://www.nihonrigakuseitai.com/lnk/index.html から捜せます。