「レム睡眠」という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
「レム」というのは、REM — Rapid Eye Movement のことです。
そのまま訳すと「すばやい目の動き」になりますが、専門用語では「高速眼球運動」と言うみたいです。
つまり、レム睡眠中は寝ているのに目ん玉がきょきょろ動いているんだそうです。
私は見たことはありませんが、寝ている人のまぶたをそっと持ち上げると目がきょろきょろ動いてるんでしょうか---? 実際に見ると怖いかもしれませんね。
レム睡眠に対して目ん玉が動いていない眠りを「ノンレム睡眠」または「徐波睡眠(じょはすいみん)」と言います。
これが所謂「深い眠り」の部分です。
健常な成人では、このレム睡眠とノンレム睡眠が一晩中、約90分の周期で繰り返されます。
野田 他, 日本機械学会誌, 116-1140 (2013) 752-756 より
質の高い眠りを得るために、高級な布団や枕を購入された方がおられるかもしれません。
しかし、いくら高価な寝具を用意しても、眠りを邪魔するものを排除しなければ、質の高い眠りを手に入れることはできません。
睡眠に影響を及ぼす三大環境因子というのがあります。
それらは、温湿度・光・音です。
部屋が高温多湿や低温であったり、睡眠中に光の照射や騒音があると、レム睡眠とノンレム睡眠の周期が狂わされて覚醒が増加し、ノンレム睡眠だけでなくレム睡眠も減少するそうです。
質の高い眠りを獲得するには、先ずは部屋の温度と湿度を調整し、眠りを邪魔する光と音を排除することが重要なのです。
お酒の強い人と弱い人がいるように、アルコール摂取が睡眠に与える影響もかなり個人差があるように思われますが、一般的に以下のような傾向があります。
• 入眠困難
• 翌日の起床困難
• レム睡眠の減少
• ノンレム睡眠時の睡眠深度の浅化
寝る前に一杯飲むと良く寝られると言う人もおり、研究報告のデータ上も一定のアルコール量だと入眠が早くなっているケースもあります。
しかし、その後のレム睡眠とノンレム睡眠の周期は不規則で、眠りの浅い状態が一晩中続くという結果になっています。
どうもアルコールは睡眠にとって「百害有って一利無し」のようです。
お酒の好きな私にとっては耳の痛い話です。
また、就寝前のカフェイン摂取も入眠を妨げるので良くありません。
調査対象を「運動群」と「非運動群」とに分け、さらに運動群を運動強度によって「高」「中」「低」とに分けた計4群の眠りについて研究した報告(Executive Summary of the 2003 Sleep in America Polls (2003))があります。 そこで報告されている運動と眠りの特徴を以下に示します。
以上は一論文の例ですが、軽度な運動であっても、また習慣的ではなく一過性の運動であっても眠りの質を向上させることが、他の論文でも報告されています。
押し並べて見ると、運動は眠りに良い影響を与えるようです。
一方で、過剰な運動はストレス反応を引き起こして眠りの質を悪化させるという報告や、就寝直前の運動は悪影響があるという報告もあるので、ご注意を。
入浴は眠りに良い影響をもたらすという報告(Sung, E.J., et.al., J. Phisiol. Anthropol. Appl. Human Sci., 19 (2000) 21-27)があります。
しかし、42℃以上の熱いお湯だと交感神経活動が高くなるため、かえって眠りを妨げることになります。
就寝前にはぬるめのお湯に入るのが効果的です。
以上から、ぐっすり眠るための5箇条を作ってみました。
一.暑すぎず寒すぎず
一.光と音を遮るべし
一.お酒は控えめに,寝る前のお茶やコーヒーは厳禁
一.運動は毎日少しでも
一.入浴はごゆるりと